バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~感想・考察 ソナタの永遠とコーダの永久機関

せろりんです。えっ、「バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~」略して「カラパレ」を見たことがない!?

カラパレは、マーメイドのアイドル「カラフル・パストラーレ」の5人がアイドルを目指すことを決意をするまでの日常を描いたアニメです(アイドルを目指すアニメではないです)。

マーメイドの女の子5人が廃館になった映画館で上映会を行ったり、過去と通信したり、マーメイドなのに陸に行ったり、5人いっしょに楽しく過ごしたりするアニメです。

マジの名作なのでぜひ見てください。おれは好きすぎてもう何回見たかおぼえていません。あと55回は見る予定だ!カラパレはdアニメストア、dアニメストア for Prime Video、Hulu等で配信中!

dアニメストア for Prime Video
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B07MG3VV63
dアニメストア
https://anime.dmkt-sp.jp/animestore/ci_pc?workId=22566
Hulu
https://www.happyon.jp/watch/100032008

それはなに

©CP△/バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~/9話より

「まさかコーダ、そのヘンテコな機械も写り込ませるつもりじゃ・・・」
「せ、世紀の発明品を、ヘ、ヘンテコ呼ばわりするとは!」

9話で登場したこの機械はなんでしょう。あの天才・コーダをして「世紀の発明品」と言わしめるほどの機械です。

言っておきますがコーダはマジモンの天才です。ソナタたちの要望に応えてミルミールをよよいのよいで作ったついでに「こんなこともあろうかと」で撮影機まで作ってしまう技術力の高さはエジソンも逃げ出すほどです。

11話では割れたキネオーブの修復も行っています。おれには破片を接着剤でくっつけただけにしか見えませんが、コーダの話を聞く限り、割れたキネオーブを修復することは非常に困難な作業のようです。デカいホムセンとか無さそうな田舎ではなお困難な作業だったことでしょう。まさに全知全能の神。 コーダは天才!そのコーダが「世紀の発明品」だと主張しているのがこの謎の機械です。

©CP△/バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~/9話より

では、この発明品は一体何に使うものなのでしょう。オレンジ色の球形部分には切れ込みのようなものがあります。恐らくガチャガチャのカプセルのように切れ込みで2つに割れて開閉し、なにかを出し入れすることができるのでしょう。

大きさや形状から判断すると、オレンジ色の球形部分にはキネオーブがぴったり入りそうです。球の横にある穴は、キネオーブに撮影機を接続するときの穴によく似ています。この発明品は、キネオーブを入れて使う機械である可能性が非常に高いです。

©CP△/バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~/9話より

キネオーブが入っているであろうオレンジ色の容器の一部は、何の操作もなしに自発的に光ります。自発的に光るといえば、まさにキネオーブが示す奇妙な性質の一つです。たとえば映写機にキネオーブを置くと、キネオーブは自発的に光り、映写機を通してスクリーンに映像を投影します。

こうした自発的な発光は、特に外部から電力などのエネルギーの供給を受けることなしに起こっているように見えます。しかも、保存状態が良ければかなりの長期間保存することが可能なキネオーブですから、ラジウムのように物質自体を崩壊させることで発生するエネルギーで発光しているとも考えにくいです。だとすると、キネオーブの存在はエネルギー保存則に反している気がしてなりません。 恐らく地球には無い物質で作られているのでしょう。

©CP△/バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~/9話より

この「世紀の発明品」は、オレンジ色の部分が発光を始めると同時に激しく運動をします。この機械はマッサージ機なのでしょうか。マッサージ機は、お疲れの首長さんやお疲れのアザラシ郵便にとっては世紀の発明かもしれませんが、コーダにとっては恐らく違うでしょう。

世紀の発明品といえば、イギリスに産業革命をもたらしたワットの蒸気機関が思い浮かびます。蒸気機関は、石炭が燃えるときに放つエネルギーを物体の運動に変換する機械です。そう考えると、ひょっとしたらコーダの発明品は、キネオーブが発するエネルギーを物体の運動に変換する機械なんじゃないでしょうか。しかし、この機械がエネルギー源としているキネオーブは、石炭のように酸素と化学反応して燃え盛っているわけではありません。明らかに無からエネルギーを生み出しています。エネルギーが無いところからエネルギーを生み出し続ける機関・・・つまりコーダの発明品は、きっと永久機関なのです。

永久機関と永遠

珊瑚糖はお茶の中でランダムな方向に拡散し、完全に溶解する。カップの外とエネルギーのやりとりが起こらない限り、一度溶けた珊瑚糖が再び結晶に戻ることは無い。
©CP△/バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~/1話より

永久機関について考えてみましょう。

産業革命後のヨーロッパの物理学者は、蒸気機関の効率を上げることを目指して研究を行っていくうちに、経験的に、ある真理に気が付きます。「すべては、時間の経過にともなって、バラバラでランダムな状態に変化する」これが宇宙の真理だとされているものです。

身の回りを見渡してみれば、たしかに世の中の現象というのは全てこの法則に従っています。カゴに整然と並んだテニスボールは、すこしの衝撃でカゴから落ちてバラバラでランダムな方向に向けて転がっていきます。しかし、転がったボールがカゴに戻って整列することは、外部からエネルギーが加わらない限りは絶対にありません。これは、もっと小さな、例えばビー玉や、あるいは砂粒といった物体についても同じことが言えますし、原子という万物を構成するより小さなボールまでもが従う法則です。茶碗はいずれ割れるし、割れてバラバラになった茶碗がひとりでに元の形に戻ることはありません。それと同様に、人はいずれ死ぬし、死んだ人が勝手に生き返ることはありません。

宇宙は、時間の経過と共に、バラバラでランダムで、取り返しのつかない状態に変化していきます。永遠など無いのです。物理学者はこの経験的な事実に「熱力学第二法則」「エントロピー増大則」という仰々しい名前と、いくつかの重要な数式と、統計力学による理論的な説明を与えました。

しかし、物理学者の力を借りずとも昔の人はこの法則に気づいていて、これを「覆水盆に返らず」「ゆく河の流れは絶えずして・・・」と表現していましたし、大昔の宗教家は既にこれに「無常」という名前を付けていました。そして、「バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~」は、これの法則を「まるでシャボン」と歌い飛ばし、全12話をかけて表現したのです。

「すべては、時間の経過にともなって、バラバラでランダムな状態に変化する」という事実――エントロピー増大則――から、物理学者は「永久機関は存在しない」という同値の事実を論理的に導き出しました。石炭を燃やすとカタマリだったものが二酸化炭素に変化してバラバラになって空気中に飛散するように、物質からエネルギーを取り出す行為には、必ず物質がバラバラでランダムになる過程が含まれます。もし永久機関が存在するなら、物質をバラバラにせずに無限にエネルギー取り出していることになります。物質の状態をバラバラにせずにエネルギーを取り出す装置である永久機関の存在は、全ての物質はバラバラになってゆくと主張するエントロピー増大則に反します。だから、この世界が無常である以上、永久機関は存在しないのです。

永久機関を発明することは、永遠を発明することです。技術的にはともかく、原理的には永久機関の存在と永遠の存在は等価です。だから、この宇宙に永遠は無いし、永久も無いし、永久機関も無いのです。

小さな光となって輝いて

©CP△/バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~/9話より

「キャロちゃんがいると、パッとその場が明るくなるっていうかさ。眩しくて、見逃せなくて、今この瞬間を残しておきたいって思うんだよね。映画はその一瞬を永遠にできる、魔法の道具なの。なんてね」

10話までのソナタは永遠を願う女の子です。ソナタは、都会に憧れながらも村を出るという選択肢を考えようともしません。5人いっしょの時間がなによりも楽しいし、村のことが誰よりも大好きだからです。

ソナタがあまり自分の意見を言わなかったり、都会に行くことを拒んだりするのは、今の環境や関係が変わってしまうことが怖いからです。いつか消えてしまうかもしれないパーレルでの5人いっしょの時間を、永遠にしていつまでもとっておきたい。真珠が砕けるなんてありえない。もったいない。真珠は真珠のまま、ずっと眺めていたい。そう考えているのが9話や10話のソナタです。セレナや、フィナや、キャロだって同じ気持ちだったに違いありません。カノンに至っては関係が変わることを恐れて結晶化までしています。

ところが、5人いっしょの時間を永遠にとっておくことなど現実には不可能です。管理の悪いキネオーブが割れるのと同じように物質はいずれ崩壊するし、8話でグラディスの友人が島を離れてしまったのと同じように関係性はいずれ変わるからです。今のこの瞬間を結晶にして永遠にとっておくことは、あの忌々しい「エントロピー増大則」が否定されない限り絶対にできません。寿命が極めて長いであろうマーメイドにとって、これは何よりも残酷な現実です。

さて、先述したように「エントロピー増大則」とは永久機関の存在を否定する法則でもあります。逆に、永久機関を発明することは、「万物は滅びゆく」と主張するあのエントロピー増大則を否定することでもあります。では、永久機関を発明することができたとしたらどうでしょう。

©CP△/バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~/12話より

そう、9話で永久機関を発明したコーダは、「エントロピー増大則」を否定したと同時に、今のこの瞬間を結晶にして永遠にとっておく力を得てしまったのです。尽きることのないエネルギーで大金持ちになる力を。割れてしまった茶碗をもとに戻す夢の理論を。一瞬を完全な形で永遠にする魔法の道具を。コーダはこの機械と理論でなにをしたのでしょうか。

しかし、12話まで見てもコーダは大金持ちになっていませんし、時は進みカラフル・パストラーレは無事デビューしていますし、コーダが割れた茶碗を直している様子もありません。どうもコーダは、せっかく手に入れた永久機関とその理論を大したことに使っていないようです。もっとも、永遠を願って結晶化してしまった少女のために、割れたキネオーブを直したことくらいはあるかもしれません。

©CP△/バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~/12話より

「伝説のことを、ときどき考えます
真珠が粉々に砕けたことは悲しいことだけど、いくつもの破片が、いまもどこかで、小さな光となって輝いているんだとしたら
それは、素晴らしいことだと思います!」

真珠を真珠のまま永遠にとっておきたいと思っていたソナタの考えは、最終話で大きく変わります。

真珠が粉々に砕けたとしても、シャボン玉が弾けたとしても、キネオーブが割れたとしても、宇宙がそういうふうにできていたとしても。いくつもの破片が、いまもどこかで小さな光となって輝いているんだとしたら。それは、素晴らしいことだと思います!

ソナタがそう宣言して、バミューダトライアングル ~カラフル・パストラーレ~は幕を閉じます。


せろりんでした。

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