カーボベルデVSアルゼンチン、ガチでおもしろい試合だった・・・。7時にキックオフして、そろそろ14時になるけどまだ頭から離れない。
おれは普段あらゆるスポーツを見ない人で、でもセミみたいに4年に1回だけ湧いてきてワールドカップの日本戦と注目試合だけ見る典型的な普通の日本人だ。そしてこの記事はワルドカを1ミリも知らない人に向けて書かれている。
ワルドカを1ミリも知らない人からすると、カーボベルデってどこだよ、という感じだろう。そういう人のために知ったかぶりで説明をすると・・・カーボベルデはアフリカの小さな島国で、そして今回のワールドカップの究極のダークホースだ。
いまやっている決勝トーナメントの前に、予選みたいなノリで、4カ国が総当りで戦うリーグ戦が行われていた。そのリーグ戦で、カーボベルデは優勝候補の超強豪スペインに0-0で引き分けて、けっこうな強豪のウルグアイに2-2で引き分けて、サウジアラビアに0-0で引き分けた。
カーボベルデはFIFAが作ってる謎の強さランキングで67位の国で、順位だけを見れば出場国の中では最弱クラスだ。カボベ選手のロペスは以前アイルランドで銀行員をやっていて、母国からポルトガル語で送られてきた代表招集のメッセージをスパムだと思って9か月放置していたらしい。そのレベルの国なのに強豪相手に全試合引き分けてトーナメントまで勝ち上がってしまった。
そうして今日のトーナメント初戦で対戦したアルゼンチンは、御存知の通り鬼強い。FIFAが作っている謎の強さランキングで堂々の1位。4年前の優勝国でもある。アルゼンチン相手に奇跡はまた起こるのだろうか?ということで、おれのような日本人ミーハーからも注目されていた試合だった。インターネットでは「最強の矛VS最強の盾」なんて言っている人がいた。
結論から言うと死闘の末に3-2でカーボベルデは負けてしまったのだけど、ほんとうに魂を揺さぶられる試合だった。見なくても記事の内容は理解できるが、得点シーンだけを1分にまとめたダイジェスト動画を一応貼っておく。

カーボベルデは人口60万人くらいの島国で、日本で例えると八王子や島根と良い勝負だ。面積は滋賀県ほど(琵琶湖込み)。アフリカ大陸の大きさと比べると塵のようにしか見えない。
カーボベルデの強さの理由は、サッカーを見慣れていないおれでもわかるくらい明らかだ。なんといってもゴールキーパーが強い。キーパーのボジーニャは40歳のおじさんなのだけど、40歳のおじさんだからこそなのか、落ち着きがすごい。落ち着いたまま本当にあらゆるシュートをとめる。インターネットでは「ゴールキーパーがすべてのシュートを止めれば絶対に負けない、を地で行っている」と冗談みたいなことが書かれていた。
たしかにDAZNが公開しているスペイン戦のボジーニャ切り抜き動画を見ても明らかにすごい。最強国スペインが放つ全部の弾をとめている。そしていつも落ち着いている。スペインはこの試合で27本のシュートを試みたらしいが、結局1点も取れなかった。ボジーニャはスペイン戦のあと、一晩でインスタのフォロワーが5万から500万になったらしい。「らしい」というのは、現在のフォロワーが2800万人だからだ。これほどの選手でありながら、ボジーニャはお金とビザの関係で母親すら応援に呼べていなかったらしい。
こういう活躍は、もちろんスペイン戦の1試合だけならマグレの可能性もある。しかしボジーニャは、この後にウルグアイやサウジにも引き分けた。そうしてカボベはいよいよ不気味なダークホースとして一躍有名になったのだ。
余談だがダークホース枠だと自認していた我らが森保ジャパンは、かなり善戦したものの結局チュニジアにしか勝てないままブラジルに普通に負けて敗退してしまった。

そういうわけで朝7時にキックオフした。おれは、ミーハーらしくカーボベルデにも勝ってほしいけど、でもそんなことは何度も起こらないだろうし、まっとうに強いアルゼンチンがトーナメントの一回戦でわけわからん負け方するのも嫌だな、みたいなスタンスで見ていた。
いざ試合を見てみると、さすがにアルゼンチンのほうがずっとうまいけど、カーボベルデもよく戦えているな、と思った。そしておれは、ミーハーらしくマテ壺でマテ茶をすすっていた。
おれたちミーハーの望む展開は1つ、0-0からのPK戦だ。決勝トーナメントには引き分けがない。90分の前後半で決まらなければ30分の延長戦に入り、それでも同点ならPKで白黒つける。最強の盾ことカーボベルデがアルゼンチンのような超強豪から点を取れることは、まずないだろう。勝ち筋があるとすれば120分を守りきってPK戦にもつれ込ませることだけだ。
PKは運要素が強い。それに、PKとなれば守護神ボジーニャが奇跡を起こしてすべての弾を止めてくれるかもしれない。カーボベルデに勝ち筋があるとすればこれ以外にないだろう。だからカーボベルデは絶対に失点してはいけないのだ。
しかし前半に、メッシが後方からやたら長いパスを軽々と受け取って、朝飯前ですよ、みたいな感じで1点入れてしまった。うますぎる。逆らってすみませんでしたという気持ちになってきた。メッシにとって、点を入れるというのはこれほどまでに簡単なことなのかと思った。
アルゼンチンはどう見ても圧倒的に強かった。優勝した前回大会から4年経ち、ずっと敵陣でとぼとぼ歩いているメッシにみんなで球を供給してメッシに決めさせる、みたいな謎の戦術をとる奇妙な国に変貌していたが、それはそうと鬼強かった。
カボベのような、守備は超硬いかもしれないが攻撃はそれほどでもないように思える国がアルゼンチン相手に点を入れられるイメージがまったく湧かなくて、流石にこのままボコされて負けるんだろうなと思いながら見ることになってしまった。
ところが後半、カーボベルデが冷静に1点入れた!ショート動画を貼っておくので見てほしい。一瞬の隙をついた攻撃だ。なんという落ち着きだろう・・・。思わず「おおおおおおおおおお」と叫んでしまった。
キーパーのボジーニャは確かにどうみても圧倒的に強くて、ありえないような超人的守備を繰り返していた。ボジーニャがいなかったらメッシは軽々とハットトリックをきめていただろう。でもカーボベルデはそれだけじゃなくて、チーム全体がちゃんと強かった。
もちろんテクニックやフィジカルではアルゼンチンのほうがだんぜん強いんだけど、カボベはなんといってもメンタルがすごい!サッカーを見慣れていないおれからしても明らかに独特のメンタルだと思う。
会場は水色一色で、たぶん99.5パーセントくらいがアルゼンチンを応援していたのに、カーボベルデ人は全員が落ち着いていた。実況の人は「自分達が応援されてると思ってるかのよう」と表現していた。
いい意味で脱力していて、格上相手にほとんど臆したり焦ったりしていない。全員が仙人のように奇妙に落ち着いていて、持てる力で正確にプレイしている。連携は極めて密だ。格上相手だから負けるのが当然だと割り切って気楽にプレイしているのかと思いきや、何があっても絶対に勝つという闘志と勇気も感じられて、隙があれば的確にゴールを狙っていた。針の穴を通すようなか細い確率を手繰り寄せて格上相手に粘った試合だったわけだが、選手の全員が落ち着いて周りを見渡して常に針の穴を探していたように思える。
そういうわけで1-1のまま延長戦に突入すると、開始2分でまたアルゼンチンに1点入れられてしまう。もう終わりだ・・・1点目みたいな奇跡はもう起こらないだろう・・・と心の底から思ったが、カーボベルデはまさに針の穴を通すような奇跡的ゴールでまた同点に追いつく。思わず「おおおおおおおおおおおおおおおおお」と叫んでしまった。ミラクルすぎる。
このときのショート動画を貼っておくのでぜひ見てほしい。文字通り、針の穴を通すようなシュートだ。アシストも含め、なんといっても落ち着きがすごい。この土壇場でここまで落ち着いていることがありえるだろうか?
このまま同点で試合終了いけるだろ、と思ったが、そうは行かなかった。結局その後、あと10分ほどで延長戦終了というところでアルゼンチンにどさくさで3点目を決められてしまう。3-2のピンチだ。
それからカーボベルデは本気であがいた。時間ギリギリまで果敢に攻めていたし、何故かぜんぜん疲れていないように見えたし、そのせいでメッシですらディフェンスとして走ってたし、この調子なら奇跡の同点からのPKになってボジーニャがなんとかしてくれるとおれも最後まで信じていたが、ついには試合終了の笛が鳴った。まさに死闘だった。1秒も目が離せなかった。ほんとうにすごい試合だった。おれは点が入った瞬間の話ばかりしてしまったけど、カーボベルデが勇気を持って果敢に、しかしテクニカルに攻める姿の1秒1秒には、おれたちの魂を揺さぶるなにかがあった。
本当に伝説的な試合だった。奇跡も魔法もあるんだと思った。負けてしまってほんとうに残念だ。カボベの活躍をまだまだ見たい。今度は日本と試合してほしい(引き分けてほしいものだ)。4年後のワールドカップも勝ち上がってきてほしい。
実況の人が言うには、最後に負けた後、ボジーニャは倒れている選手を次々と起こして励ましていたらしい。独特のメンタルの源泉はそういうところにあるんだろう。メンタルバケモンが一人いると全員がメンタルバケモンになる。メンタルというのは伝染するものなのだ。ボジーニャがチームメイトをはげます姿は、日テレがわざわざボジーニャだけ映っている試合後映像のYoutube動画を投稿するほどには印象的で象徴的なものだった。
明治時代、日本とかいう無名な謎の小さな島国が日露戦争であのロシア帝国に辛勝したとき、世界はとても驚いたらしい。その話を聞いて日本人のおれは、いやいや、そういうこともあるでしょ、いつまでも欧米だけが最強なわけないじゃん、なぜ驚くんだい?と長年疑問に思っていたけど・・・・・・まさにこんな気持ちだったんだろう。
今回はじめて知ったのだけど、カーボベルデは国外に住む人(ディアスポラ)がとても多いらしい。そういう人は、国内人口60万に対して100万人もいるという。実況者がチラッと言っていてほとんど聞き流してしまったが、選手の誰だかは試合前に「国内外のカーボベルデ人に勇気を与えたい」みたいなことを言っていたらしい。しかし蓋をあけてみるとそんなのはまったくの計算違いで、実際にはあらゆる人間に勇気を与えていた。メンタルというのは伝染するものなのだ。おれは精神論というのをけっこう小馬鹿にしている人間なんだけど、そうも言ってられなくなってきた。
おれたちは人間の精神力と、世界の広さとを、とても過小評価していたんだと思う。カーボベルデにはカーボベルデのメンタルがあり、カーボベルデのスピリッツがある。そういうわけで、サッカーにまったく詳しくないおれがこのような知ったふうな文章を書くのはけっこう勇気のいることなのだけど、今日のことを忘れてしまわないために書き残しておこうと思った。おれはそのうち世界一周の旅行をしたいとぼんやり考えている。どこの国に行って、どこの国には行かないか冷静に選ぶつもりだったのに、行かなきゃいけないところが増えてしまった。


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