せろりんです。
Audibleってメチャクチャいいサービスなんですけど、落とし穴がいろいろあって挫折してしまう人も多いです。
年間80冊くらい聴いてるプロオーディブラーのこのおれが、習慣化を達成する方法を伝授しつつ、習慣化するまでに聴いとくと良い初心者向けのオーディオブックを紹介します。
も く じ 🐬
習慣化のコツ
オーディブルを楽しむにはいろいろなコツがあるわけですが、あんまり知られてない気もしています。コツを踏まえずにAudibleを使い始めてしまうと、耳が滑って最初の一冊を楽しめず挫折してしまうわけです。
そして、自分が「視覚優位の人間」であること、「生来人の話を聴くのが苦手だった」こと、「字で読んだほうが入ってくる」ことに、”気づいて”しまい、本当は適性があるのにプロオーディブラーへの道は永遠に閉ざされてしまうのです。以下のコツをまもりましょう。
おもしろおかしい本を聴く
コレめっちゃ重要です。せっかくなら脳に良さそうな「失敗の本質: 日本軍の組織論的研究」とか「罪と罰」みたいなクソつまんなそうな難解な本にトライしたくなる気持ちもわかるんですが、プロオーディブラーのおれからしても、字で読んで難しい本は耳で聴いても難しいです。最初は簡単な本か一度読んだことのある本に挑戦しましょう。この記事の下のほうでおすすめの本を紹介しています。
倍速で聴く
皆様におかれましては、映画やアニメをタイパ重視で倍速視聴するZ世代を横目に1倍速で見て、Z世代と違って自分だけは芸術がわかってる、みたいな特に根拠のない謎の優越感に浸っていることとお慶び申し上げます。
おれもその一人なわけですけど、確かにおれたち江戸時代の人間にとっては、なんらかのコンテンツを倍速で視聴することには極めて強い抵抗感があります。ところがAudibleだけは例外です。Audibleの1倍速はメチャクチャ遅いので、律儀に1倍速で聴いているとガチで破滅します。たとえば「走れメロス」なんて、読書が遅いおれでも15分くらいで読める文量なのに1倍速だと40分くらいかかるわけです。演技を楽しむために時々1倍で聴くのもありですし、1倍速でAudibleを習慣的に楽しんでいる人も普通にいますけど、最初は2倍、3倍にして聴き取れる限界の速度で聴くのがおすすめです。Audibleは律儀に1倍速で聴いてる奴から脱落していきます。
20分くらい聴いてつまらなかったら切る
朗読や文章がイマイチ合わないAudibleを聴いてると、アッ、今ぜんぜん話聴いてなかったな、って瞬間が必ず訪れます。この現象が何回も続くと話を理解できなくなってしまいます。そういうときは最初から聴きなおしても同じことが起こるだけなので、20分くらい聴いても耳が滑るようだったら、素直にAudibleで聴くのはあきらめましょう。紙で読んだほうが楽しめる本というのは確実に存在します。
はじめにあらすじを読んでおく
オッこのタイトルおもしろそうだな、再生したろ、と思ってあらすじを確認せずに再生するとたいてい挫折します。
生活をAudibleに合わせろ
おれはドライブ中、家事中、散歩中にAudibleを聴くことで月5~15冊くらいのオーディオブックを消化していますけど、逆に言えば、その3つのシチュエーションでしかAudibleは聞かないわけです。もしおれが運転も家事も散歩もしない生活習慣だったら直ちにAudibleを解約するでしょう。
そういうわけで、なんとしても生活にAudibleを取り込みたいと思っているのであれば、生活のほうをAudibleに向いている形にする必要があります。具体的には、歩いて買い物に行くようにするとか、Audibleを聴くためにわざわざ散歩をするとか、車通勤に変えるとか、夜寝る前に聴くようにするとかです。
おすすめの本 5選
そういうわけで、初心者が聴くのにおすすめな、耳が滑りにくく、再生時間が短く、朗読が聴きやすく、それでいておもしろおかしい本を5冊紹介します。好きなのを聴いて下さい。
リピート(乾くるみ)
謎の自然現象で10ヶ月前にタイムリープした10人の男女が、一人、また一人と謎の死を遂げていく、半分タイムリープもので半分ミステリみたいな話です。めっちゃ面白いです。
謎の自然現象で10ヶ月前に戻った10人の男女は年齢も職業もバラバラで、タイムリープしている点以外にはまったく共通点が無いのに、なぜかタイムリープした人ばかりが死んでいくわけです。10人の中に犯人がいるのか、それとも10人の中にはなにかタイムリープ以外の共通点があるのか、はたまた謎の自然現象の秘密を知っている人間が10人以外にいるのか、主人公が自分も命を狙われながらも真相に迫っていく話です。
畜犬談(太宰治)
犬がメチャクチャ嫌いな「私」が野良犬に付きまとわれてしまう話です。
心温まる動物エピソードとしてもおもしろいですし、滑稽噺としてもおもしろいですし、昭和初期のリアルな描写もおもしろいです。ちょっとサブカル作品っぽさがあるのもおもしろいです。
太宰治って「人間失格」「斜陽」「桜桃」みたいな晩年のバッド入ってる時期の暗い作品ばっかり有名ですけど、畜犬談はどちらかというと「走れメロス」「女生徒」とかを描いていた頃の光の太宰治作品です。
人間失格や斜陽あたりの代表作をAudibleで聴いてもなかなか良いんですが、そのへんは話が暗いので、初心者向けなら畜犬談あたりがオススメかな~と思います。さすがに昔の文豪の作品なので言うほど初心者向けでもないような気もしますが、太宰治みたいな昔の文豪系作品に挑戦してみたいならまずはこれがオススメです。1倍速でも40分で聴ける短さもいいです。
未来(湊かなえ)
後味悪いけど話は面白い、みたいな作風で知られる湊かなえの作品です。Audibleには湊かなえ作品が死ぬほどたくさんあるので、Audibleヘビーユーザーになるなら避けて通ることは難しい作家でもあります。
まあ、湊かなえ作品はかならずしも面白いわけでは無いですし、作風もワンパターンなんですけど、それはそうとこの作品は湊かなえ最高傑作だと思っています。
父親が病気で死に、母親の精神もヤバくなってしまった直後の10歳の少女である主人公のもとに「こんにちは、章子。わたしは20年後のあなたです」と主張する手紙が届くところから話は始まります。そこからはいつもの湊かなえ作品という感じで、毒親とかモンペとかいじめとかストーカーとの戦いが繰り広げられます。とはいえ、過去の作品と決定的に違うのは話の広がりかたです。この作品は、主人公だけではなく、親や友人の人生までを描いています。湊かなえ作品って、どれも話はおもしろいけど人間や人生を描くことは疎かになってる印象があったんですが、「未来」に関してはメチャクチャ良い感じになっています。まあ、湊かなえ作品なので話を面白くするためにちょっとジャンクフードみたいになっている部分はさすがにありますが、全体的にはよくできています。渾身の一作です。のん による朗読もめちゃくちゃ良かったです。
彼女。: 百合小説アンソロジー
いろんな有名な小説家が描いた百合短編7編を収録したアンソロジーです。全体を通してメッチャおもしろいんですけど、とはいえ、そんなに面白くない話もあり、そして後味がそんなによくない作品もあります。でもまあ、短編なので1編がすぐ終わるのが良いところです。朗読も聴きやすいです。
個人的に好きなのは乾くるみの「九百十七円は高すぎる」ですね。駅ビルで偶然見つけた憧れの先輩が「917円?そんなにするの?」と呟いていたのを聴いて、先輩へのあこがれが強すぎる2人が先輩の買ったものを特定して同じものを購入しようとする話です。
ミステリとしては別にそこまでおもしろくないんですけど、日常ほのぼの百合小説みたいな感じでメチャクチャよかったです。乾くるみって「リピート」とか「イニシエーション・ラブ」の殺るか殺られるかの恋愛のイメージが強かったので、こういうのも書けるんだな~と思いました。まあこの短編も若干殺るか殺られるかの恋愛の片鱗が見えるような気もしますけど、作品で描かれる部分は平和です。もっと百合小説を書いてほしいです。
白亜紀往事(劉慈欣)
白亜紀の昔に、実は恐竜と蟻が巨大な文明を築いてました、みたいな内容のSF中編です。1倍速でも6時間くらいで聞けます。
恐竜には巨大な脳から発生する科学的な空想力があり、一方で蟻には小さな体を活用した技術力がある、という設定から生まれるストーリーが結構おもしろいです。「プロジェクト・ヘイル・メアリー」もそんな感じの話でしたよね。
SFでありながら難しい設定はそこまで無く、話もそんなに複雑ではないです。劉慈欣だと例えば有名な「三体」のほうがずっとおもしろいんですけど、三体は3部作でメチャクチャ長い上に、設定が難しくストーリーも複雑なので、初心者向けならこっちかな~と思います。これを読んで面白かったら三体に挑戦するといいと思います。
終わり
そんな感じです。
Audibleを活用して立派なプロオーディブラーになりましょう。
せろりんでした。
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