高校時代全商簿記の勉強してた人が日商簿記2級に受かるには

せろりんです。

おれは高校が商業科だったので、むかしむかし簿記の勉強をやってました。そんで、全商簿記2級と、全商簿記1級の原価計算に合格しています。全商1級会計は、勉強はしていたんですが試験の存在を忘れててすっぽかし、そのまま卒業して大学(理系)に進学し、3年が経って今に至るという感じです。

そんで先日、思うところあって日商簿記2級を受けて一発合格しました。高校時代に全商簿記の勉強したことがあって、久しぶりに簿記の勉強を再開したいけどどうすればいいんだろう、っていう人は結構いると思います。ところが、そういう人向けの情報ってググッても全然出てこないのでいろいろ書いておこうと思います。

なぜ日商簿記2級を受けたのか

おれは工学部生です。で、理系でも経理とか財務のこと詳しいと人材として多少強いかなーと思ったというのがあります。

理系出身エンジニアとしてやっていくのに簿記なんて必要なくない?とも確かに思うんですが、順調に出世すれば会計や経理の知識が求められることもあるわけですし、出世しなくても人生何が起こるかわからず、急に思い立って起業することも無いではないと思うので、暇な時に簿記の勉強しとくのはほどほどにコスパいいな~と思うわけです。

まあ複式簿記の基礎的な理屈だけなら全商簿記でも問題ないわけですが、就活での威力も考えると、(高卒で即就職する人はともかく)大卒なら文理問わずやはり全商簿記2級はクソザコらしいんですよね。

全商資格は知名度がザコなので全商1級でも日商3級以下の扱いをされることすらある、なんて話も聞くくらいです。というか実際そのとおりだと思います。大企業の人事は全商簿記みたいなマイナーな資格は何級であってもほとんど考慮に入れないはずです。じゃあ日商の2級でも取っとこうかな?と思って、最近暇なので取ることにしたわけです。

あとは個人的な趣味です。複式簿記は結構うまいこと出来てるシステムなので、勉強してて楽しいんですよね。物理学などと同じような面白さがあります。

そんで高校の頃簿記やってて結構面白かったな―という思い出があったので、せっかくだし日商2級を目標にしよう、ということで受けました。

そういう人は何級を受けるべきか?

おれはエイヤーと思っていきなり日商2級から受けてしまいました。けど、ブランクがある人は日商の何級から受けるべきかで悩むと思います。

そんで全商簿記を受けたことがある人は大抵商業高校に通っていた人だと思うんですが、商業高校は(学校にもよりますが)基本を講義形式でミッチリやると思うので「独学1週間で日商3級取ったぜ」みたいな人と比べると長期記憶として簿記の知識が定着してるんじゃないかと思います。

ただもちろん、高校で簿記の勉強めっちゃ適当にやってたしなんにも理解してなかったけど何故か全商受かっちゃったぜ、みたいな人もいると思います。そういう人は基礎からやったほうが効率いいので日商3級から勉強したほうがいいだろうなって感じもします。例えば、こういう基礎の仕訳が、ちょっと考えれば一応できるのであれば、長期記憶として簿記の知識が根付いているはずなので、日商2級からで問題ないかなと思います。

A 期末につき2年前に取得した建物100,000円の減価償却の仕訳を行いなさい。ただし当期は1年間、耐用年数は10年、残存価額は0円、間接法で記帳している。

B 売掛金100,000円が当座預金に振り込まれたときの仕訳を行いなさい。

正解は

A 減価償却費10,000/建物減価償却累計額10,000

B 当座預金100,000/売掛金100,000

です。細かい勘定科目の名前なんかは忘れていたとしても、資産や負債、費用や収益のポジションがどこなのか覚えていて、仕訳の原理をある程度理解していればこの問題は解けるはずで、そういう人は日商2級から受けてもなんとかなると思います。

日商2級の商業簿記は、日商3級を基礎にさらにクレジットカードの取引やのれん償却みたいな細々とした取引が追加されます。数年経ってもまだこういった基礎の仕訳ができるのであれば、かなり複式簿記の考え方が定着しているはずなので、わざわざ日商3級を受ける必要はないかな、と思います。

日商3級レベルの細かい処理は、日商2級の勉強をやってるうちに思い出すでしょう。

資産の増加を貸借どっちに書くのか?負債が減少したら貸借どっち?みたいなレベルから怪しいのであれば、いきなり日商2級から勉強するのは効率悪いと思うので日商3級から受けるか、受けないにしても日商3級の勉強を一通りやってから日商2級に入るといいかなーと思います。

おれは日商3級からやるのはかったるいな~って思ったのでいきなり日商2級から勉強しましたけど、「見越し・繰り延べ」みたいな、ちょっと難しいけど日商3級の範囲になっている論点は日商2級のテキストには乗っていなくて、思い出すのにちょっと苦労しました。

でもやっぱり高校時代にそこそこミッチリやっただけあって、ちょっとやれば思い出したので、いきなり日商2級から勉強して正解だったな、と思います。

ちなみに工業簿記は、日商しか受験したことがない人であっても2級で初めて触れる分野なので、高校時代に勉強した原価計算は全く覚えて無くても問題ありません。

日商と全商はどう違うのか?商業簿記について

商業簿記は日商と全商でだいぶ違います。まず、日商は、たとえばリース取引とかクレジットカードの取引など、実務に沿っている(と思われる)現代的な論点が多いな~という印象を受けました。サービス業の仕訳なんかも全商にはない論点です。

それと、日商は問題文が厄介です。ネットでは「日商語」とか揶揄されている、独特の難解な表現や、どう考えても定義不足な文章で問題を出してくるので、バリバリに国語力や忖度力を試されます。

全商はそういう空気を読む力を試される問題はあまりなかったように記憶してるんですが、日商は時々あります。日商語を読み解く力は簿記的な能力とまったく関係がないのでさっさと日商語を書く作問者をクビにしてほしいというのが受験生の総意ですが、そこはまあ言ってもしょうがないでしょう。読解力がいまいちな人でも過去問解きまくればいくらか慣れて読み解けるようになると思います。

とはいってもどう読んでも解けない問題もあります。そういった変な日本語の問題は仕訳問題中心に出題されるんですが、仕訳は1問落としても4点なので、よそで補う気概が必要です。

おれたちは変な日本語を書く大人にならないように、簿記の勉強だけではなく国語の勉強もがんばりましょう。

商業簿記について、なにより大きく違うのは、日商1級の範囲だった連結会計の一部が第147回から日商2級の範囲に入ってくることです。

連結は正直言って結構難しく、本質的な理解が試される論点です。全商1級会計は連結のさわりの部分が一応範囲になってるらしいですが、おれはなぜか全くやった記憶がないですし、多分全商1級会計ホルダーの方々も1年くらい経てばもう綺麗サッパリ完全に忘れてると思います。そういうわけで連結は日商3級ホルダーも全商ホルダーもほぼみんなイチからスタートということになります。

連結は怖いです。

資本金当期首残高 XX   /子会社株式 XX

利益剰余金当期首残高 XX/非支配株主持分当期首残高 XX

の れ ん XX     /

みたいな、初見では意味がわからない仕訳がたくさん出てきます。一つの仕訳で勘定が5個も出てくるめっちゃ複雑な仕訳で、文字数も多く画数もパないという鬼仕訳をさばかないといけないわけです。

その他には、日商簿記は問題の傾向として、どちらかと言うと本質的な理解が試される問題が多いかな?という印象を受けました。全商は表自体を作ることが目的、みたいな作表の手続きを問われる問題が多かった記憶があるんですが、日商は、表が出てくる問題でも勘定科目と数字を埋めれば点をくれるという問題が多い気がします。

おれは作表問題が嫌いだったのでそのへんは助かったな―と思います。実務だといまどきは会計ソフトでチョイですので、作業よりは理論を学ぶべしという日商の出題方針は実務に即している(であろう)正しい在り方だなと思います。

日商と全商はどう違うのか?工業簿記について

工業簿記(全商だと原価計算)については、合格点が10点も違うので合格難度自体はだいぶ全商のほうが易しいなと思うんですが、問題自体の難易度としては日商も全商もそんなに変わらないかな、という印象です。

日商2級工業簿記の学習を始める前は、高校時代にやった原価計算なんて内容全然覚えてねえよって思ってたんですが、いざ学習してみると意外と覚えてるんですよね。たとえば全商原価計算ホルダーなら、借方が入口、貸方が出口みたいなイメージが染み付いていると思います。

あとは補助部門費を各製造部門に配賦するやつ(工場事務部門にかかった費用を第一製造部門とか第二製造部門に分配するやつです)なんかも結構覚えてて、さほどテキストみなくてもスラスラ問題解けるなーと思いました。

そういうわけで工業簿記については若干範囲の違いはあるものの、全商原価計算ホルダーであればかなり余裕なんじゃないかと思います。

本題と関係ないですが、まことしやかに言われている「理系は工業簿記強い」説はマジです。工業簿記はバリバリに比の概念を使うんですが、理系だと比の概念が染み付いてるので、全編を通してこんなん楽勝じゃん、と感じわけです。文系でも比の概念くらいあるとは思うんですが、染み付き度合いの違いがモロに出ます。理系は比の上位概念をバリバリに使いまくっているので比も手足のごとくつ開けるわけですが、文系はそうではないので工業簿記で苦戦しがちなのです。たまに聞く「理系は工業に関する想像力があるので工業簿記が得意」みたいなのは完全に嘘だと思います。そんなんで点数変わるわけないじゃんと思います。

勉強時間はどのくらいか?

そのへんの普通科出身日商3級ホルダーの人間が日商2級に合格するのに必要な勉強時間は、一般的には200時間前後といわれています。最近は難化傾向があり、連結も範囲になってしまったのでもうちょっと多くて250時間くらいというのが定説のようです。

そして今回合格したおれの勉強時間は150時間くらいです。標準的な勉強時間とくらべてだいぶ短いですね。

差異分析をすると、やっぱり工業簿記を一通りやったことがあるというのが大きいな、と思いました。工業簿記は理解重視の科目なので、過去に1度理屈を理解したことがある人は、時間が経っても理解しなおすのが容易いんだと思います。商業簿記は細かい処理について暗記が必要な、言ってしまえば暗記科目なので、商業簿記については、我々のような過去全商受けて久しぶりに簿記の勉強再開族は、日商3級ホルダーと比べてアドバンテージはないでしょう。

そういうわけなので、昔全商受けて久しぶりに簿記の勉強を再開する人は、全商原価計算ホルダーであれば150時間程度、原価計算に触れていない人であれば200時間から250時間くらいで合格ラインに乗るんじゃないかと思います。

原価計算をもっていれば数十時間は有利になり、原価計算持っていない場合はほかの日商3級ホルダーと差はないと考えていいでしょう。もちろん個人差はあります。

教材と勉強法について

テキストはTACのスッキリわかるシリーズを使いました。ネットで使ってる人多いからまあこれでいいっか、って感じです。積極的な理由ではないですね。

使ってみた感想ですが、まあ可もなく不可もなくって感じです。絶対もっといい説明の方法あるでしょって思う箇所はまあまああるんですが、それはほかのテキストだって同じだと思います。

たぶん簿記業界だとコイツが一番か二番くらいに有名なテキストでしょう。質実剛健って感じで、基本的なことは網羅されています。

有名で使ってる人が多いテキストなので、読んでてわからなくなったとき、ネット掲示板とかYahoo知恵袋で「XXページのここがわからないんですがどういうことですか」と質問することができるのが良いところです。

ほかに有名なテキストでパブロフ流ってのがありますが、あっちは犬が解説してくれる一方で、スッキリは猫が解説します。簿記のテキストは畜生が解説しないといけない決まりでもあるんでしょうか。

まあ、テキストなんて本当にどれ使っても大差ないと思うので、猫派はスッキリ、犬派はパブロフという選び方をすれば困ることはないでしょう。ちなみにスッキリの猫は全然かわいくないです。犬のほうが賢そうな気がするのでパブロフのほうがよかったかもしれません。

ただ、スッキリわかるのテキストにも一応練習問題がついてきますけど、難易度低めで量も少ないので、過去問集は絶対買ったほうが良いです。

過去問くらいネットで無料で手に入らんかな、と思って探したんですがどうやら過去問は公開されてないみたいです。全商は公開してるのになあ。日商はケチくさいですね。

過去問集もなんとなくでスッキリシリーズを選びました。

過去問6問と予想問題3回分がついてきます。

解説はそこそこわかりやすく、まあ普通に良いんじゃないですかねって感じです。

ただし6回分と予想問題しか付いてこないので、勉強時間がたっぷりある人はもっとたくさん過去問が乗ってるものを買うと安心かもしれません。これ買うと解答用紙も一応ついてくるんですが回答欄がめっちゃ小さいのでイマイチです。そういうときは、TACのサイトから解答用紙がダウンロードできるので、印刷して使えば良いです。テキストに書き込みしたくない派も安心ですね。

ネットを見てると商簿工簿のテキストと過去問集で3冊あれば十分と言ってる人が多いんですが、おれはあともう1冊買いました。おれが受けた回から、連結が入ってくるなど範囲が大幅に変わるので、こりゃ範囲が違う過去問をいくら解いてもらちあかないし、サンプル問題や予想問題すこしくらい解いたからってどうにもならんな、もっと物量がほしいな、と思ったので、TACの予想問題集を買いました。

網羅型って言ってるのはマジで、出題されうる全パターンの問題が乗っているといっても過言ではないかもしれません。予想問題12回分が収録されています。(追記:最近は網羅型という名前ではなく、まるっと完全予想問題集という名前になっているみたいです)

内容はメチャクチャ難しくて、はっきり言ってやってると落ち込みます。日商の過去問よりも難易度が高いので出来ないのは当然で、落ち込むのは時間の無駄ですから高地トレーニングだと思って挑むといいと思います。過去問やった後にこいつを2周くらいやれば合格間違い無しだと思います。おれは勉強時間が足りなくて0.5周もしてないんですが、それでも買ってよかったと思います。

おれがやった勉強法は、商業簿記のテキストを読んで仕訳の要点をノートに書き写し、その後テキストに乗ってる商簿の問題を1周、終わったら工業簿記のテキストを読みつつ工簿テキストに乗ってる問題を1周し、忘れつつある商業簿記のテキスト問題をもう1周し、終わったら過去問を時間測りながら全部解いてみて、怪しいところはテキストに戻って復習、その後サンプル問題(疑似過去問題)をやり、並行して網羅型の中から怪しそうな論点や新範囲を時間時間測らずにのんびりとやる(時間測ってやると出来なくて落ち込むので測らない)、というわりとオーソドックスな方法です。

まあ日商2級はそこまでガチな難関資格というわけではないので、よっぽど特殊な勉強法をしない限りどんなやり方でもそんなに差は出ないんじゃないかなあと思います。基本はテキスト読んで問題を解く、です。

テキストとか勉強法に悩んでいる暇があったら勉強したほうがいいでしょう。勉強の基本はやっぱり手を動かすことです。

あと、全体を通してやったのは、こういうふうにパソコンのモニターの下とか、机の隅っことか、トイレの扉とかに、暗記する事柄や出来なかった問題を貼り付けておくというやつです。

これをやっとくと勉強しない日だろうと休憩中だろうと嫌でも目に入るので、ゴリ押しで暗記することができます。そんで、これは絶対覚えたぞと思ったら剥がして捨てましょう。

これは大学受験のときからやってる勉強法で、個人的には結構良いやり方だと思うので、部屋が汚くなるのが気にならないのであればやると良いと思います。検定が終わった瞬間に全部剥がして捨てるのが爽快です。

ちなみにこの方法で暗記した事柄は検定が終わった瞬間に全部忘れてしまう諸刃の剣です。

受けてみた感想と今後について

日商2級というと、役に立つ資格として運転免許の次にランクインしていることが多い資格なので、やっぱ取れてよかったです。

簿記の勉強したことあるっつっても全商の検定しか持っていないということになんとなく後ろめたさがあったので、重ね重ね、日商2級受かってよかった~の一言に尽きます。資格は無形固定資産なのでやっぱり持っとくと自信に繋がります。

あとは高校の簿記の授業でよくわかんなかった点も、自分から能動的に学習することで理解が深まったなーと感じます。高校では、商品在庫を売上原価に加減する仕訳を、「仕繰り繰り仕で暗記しろ!」と教わったんですが、その教え方だと(合格はできるかもしれないですが)理屈がよくわかんないですよね。

でも自分で勉強すると、理屈を考える必要があるので、あーこれは今年売れなかったぶんを売上原価から引いて資産に足してるんだな、と理解(ワカ)ることができるわけです。能動的に勉強することで、このように高校時代はよくわからなかった処理も理解できるようになって良かったです。

それと、おれが受けた回から範囲に連結が入ってくるので、チクショーなんてタイミングで受験してしまったんだ、って思いました。でも(受かったから言えることですが)連結を学習できたのはよかったのかも、と思います。

というのも、ネットで決算書を公開してるような大企業は大抵連結会計をやってるんですよね。そして暇な時にネットで適当にどっかの決算書を眺めていると、たしかに非支配株主持分、とか書いてあるわけです。

連結やってるとなんとなく意味が分かるんですが、連結やってないと何のことなのか全くわからないですよね。実際の試験でも、おれが受けた147回は、範囲が変わるタイミングだったので問題が易しく、連結の範囲が大きな得点源になったので、勉強してるときは連結クソッタレ~と思ってましたが、案外ナイスタイミングで受けたのかもしれません。

今後についてですが役に立つ資格ナンバーワンの運転免許を取りたいです、というか取らないとヤバイ、取ります。

それと、2級をとったなら次は1級となるのが普通なんですが、流石に1級はとりません。

確かに、簿記の勉強したのに2級でやめちゃうのはもったいなくて、1級も興味あるっちゃあるんですが、そこが日商のしかけた卑劣な罠です。1級は泥沼らしいので素直に撤退します。準一級みたいなのがあれば受けていたかもしれません。無いので撤退します。

建築業経理士みたいな関連資格も興味ないこともないですが、それより先に運転免許を取るのとTOEICで人に言っても恥ずかしくない点を取ろうと思います。。

さようなら。

せろりんでした。

この記事は、当サイトの前身「日本霜降社」に投稿した記事を移転したものです。

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