楽しくて儚いDIYの魅力「スクール×ツクール」感想&紹介

せろりんです。

高校生がDIYをする漫画「スクール×ツクール」がバカみたいに面白かったので、DIY趣味に片足を突っ込んでいるおれが読んで感じた感想を交えつつ漫画を紹介する記事を書きます。

この記事にはゴリゴリにネタバレが入っていますが、とはいえ「スクール×ツクール」は、内容を知ってしまうと面白さが激減するようなタイプの漫画ではないので、気にする人以外は気にせず本文を読んでいただいて問題ないと思います。

登場人物を紹介するぞ~

この漫画は、既刊3巻の時点で名前のあるキャラクターが4人しか出てきていません。少ないですね。4人のうち1人は顧問の先生で、残りの3人がDIY部に所属する高校生です。

立川きずく さん

田岡りき・wogura『スクール×ツクール 1』(株式会社小学館、2019) p.5より引用

この漫画の登場人物の中で唯一DIYに詳しい立川きずくさんです。立川きずくさんは、学校のそこらじゅうから不用品をもらってきて日曜大工することを生きがいにしている謎の人間です。

田岡りき・wogura『スクール×ツクール 1』(株式会社小学館、2019) p.74より引用

立川きずくさんはまあまあヤバい奴です。

・学校の備品の椅子をぶっ壊して机をつくる
・文芸部の部室をやんわり乗っ取ってDIY部を創設
・学校の屋上の鍵をパクり、屋上に無許可で秘密基地を建設
・学校の屋上で炭火バーベキュー

などなどの武勇伝があります。学校の秩序を破壊せし者ですね。「コイツ大丈夫かよ」と思う反面、楽しそうに秩序を破壊してのける様は痛快そのものです。

津田山亜紀 さん

田岡りき・wogura『スクール×ツクール 1』(株式会社小学館、2019) p.58より引用

DIY部員2人目は、学校の秩序を守りし者・生徒会副会長の津田山亜紀さんです。立川きずくさんを叱ることを生きがいとしている謎の人間です。

「立川きずくは目を離すと何をするかわからないから近くで監視しておきたい」という、ラブコメのツンデレヒロインみたいな理由でDIY部に入ります。この人はあんまりDIYをしません。

中原奈子 さん

田岡りき・wogura『スクール×ツクール 1』(株式会社小学館、2019) p.7より引用

DIY部の3人めは、文芸部にも所属する1年生・中原奈子(なこ)さんです。文芸部の他の部員は全員が幽霊なので、この人は実質1人で文芸部をやっています。落ち着きのある空間でひたすら読書を楽しむことを生きがいとしている謎の人間です。

中原奈子さんは本さえあれば生きていけるタイプの人間ではありますが、同時に、可能な限り読書の快適性を追求したいタイプの人間でもあります。そういうわけなので、こう見えて物欲が割と強めです。

中原奈子さんはコミュニケーション能力に自信がないので、人間に話しかける前に、喋る内容をシミュレーションしがちです(実は、コミュニケーション苦手人間の心理をリアルに描写している点も、この漫画の魅力の一つです)。無口であんまり喋らない一方で、心の声がメチャクチャ多いのも中原奈子さんのオモシロポイントです。

田岡りき・wogura『スクール×ツクール 1』(株式会社小学館、2019) p.13より引用


「優しい人たちの厚意によって今日も生かされています」ってなんやねんという感じはしますが、ともかく

①生徒会副会長・津田山亜紀さんが、DIY狂・立川きずくさんに「棚が邪魔だから捨てろ」とキレる
②DIY狂・立川きずくさんが棚を捨てる
③文芸部員・中原奈子さんが、捨てられていた棚を拾う(占有離脱物横領)

この流れで中原奈子さんと立川きずくさんは出会います。出会ってしまったが最後、文芸部の部室は立川きずくさんにやんわりと乗っ取られてしまい、いろいろあって立川きずくさんと中原奈子さんと津田山亜紀さんの3人をメンバーにDIY部が発足します。

自分でやると楽しいよな!DIYの魅力がたっぷり

高校生が何らかの趣味をやる漫画は星の数ほどありますけど、ほかと比べて「スクール×ツクール」がやや特殊なのは、趣味初心者が上級者の手ほどきをほとんど受けない点にあります。

ここで言う趣味初心者は、文芸部の中原奈子さんです。中原奈子さんは、1話の時点では(恐らく)木材に釘を打ったことも無いようなガチのDIY初心者です。

田岡りき・wogura『スクール×ツクール 1』(株式会社小学館、2019) p.23より引用

文芸部員・中原奈子さんがDIY上級者たる立川きずくさんの手ほどきを受けながらDIYをするのは、既刊3巻のうち、1巻の1話で棚を加工するシーンだけです。唯一この話では、立川きずくさんがビスの打ち方やノコギリの使い方を手取り足取り教えてくれます。ところがその後は、中原奈子さんが自分で始めた工作に限っては、立川きずくさんが積極的に手助けすることはありません。

立川きずくさんは良いヤツなので、相談すればコツを教えてくれたり、道具を貸してくれたりはします。ですが、他人が自分で始めた工作に、積極的に手を出したり口を出したりすることはありません。部員同士があまり干渉せずに黙々とつくりたいものをつくりたいようにつくる様子を描くのが、「スクール×ツクール」の作風です。高校生趣味漫画の多くは、趣味そのものを描くのと同時に、高校生たちの絆や友情にもフォーカスすることが多いです。一方で「スクール×ツクール」の人間関係はわりとサバサバしています。そういう作風になっている原因は、DIYという趣味の特殊性にあります。

DIY、つまりDo It Yourself、つまり「自分でやる」ことのおもしろさは、まさに自分でやることそのものにあります。DIYは、全部「自分でやる」ことで、作品も経験も手柄も成功も失敗も全て自分のものになるから楽しいのです。DIYの数ある魅力の中には「道具さえあれば既製品を買うより安く作れる」とか「部屋にピッタリあった家具を作れる」といった、合理的な部分も当然あります。でも、ぶっちゃけると、そんなのはDIYオタクにとってはどうでも良いのです。たとえばもしニトリが、自作するよりも安い値段でオーダーメイドの家具を作って家まで送ってくれるサービスを始めたとしても、DIYオタクのほとんどはDIYをやめないでしょう。

いろいろある趣味の中で、「自分でやる」ことそのものが目的になっている趣味はDIYくらいです。登山や釣りや自転車やキャンプや戦車と違って、「自分でやる」ことにこそ意味のあるDIYという趣味の面白さを表現する上では、上級者が初心者に口を出さない作風がどうしても必要です。上級者が初心者に口を出してしまったら、それもうDIYではない・・・という思想で描かれている漫画なのです。

田岡りき・wogura『スクール×ツクール 2』(株式会社小学館、2020) p.128より引用

ということなので、上級者のレクチャーをほとんど受けていない中原奈子さんは、最新3巻の時点でも、ノコギリを使うのとビスを打つのとヤスリをかけることくらいしかスキルがありません。それでも、中原奈子さんは物欲が強いので、持てる技術でゴリゴリにDIYをしていきます。2巻では読書を快適にするためにロッキングチェアを作ろうとしています。

田岡りき・wogura『スクール×ツクール 2』(株式会社小学館、2020) p.145より引用

木を半円状に加工しようとする中原奈子さんですが、とはいえノコギリを使うのとビスを打つのとヤスリをかけることくらいしかスキルが無いので、木を曲線カットするには一工夫が必要です。当然ですが普通のノコギリでは曲線は切れません。

いろいろ悩んだ末に、台形則で数値積分をするのと同じ原理でノコギリとヤスリを使って曲線カットを実現する方法を一人で独自に編み出します。この中原奈子さんがやっている行為にこそ、DIYの面白さと、この漫画の面白さが詰まっています。

DIYの面白さは、一度身につけたスキルを別の作業に応用できるところにあります。中原奈子さんは元々ノコギリを使った直線カットしか出来ませんでしたが、この回でノコギリとヤスリを使って曲線カットを無理やり実現する技術を習得しました。つまり次回から曲線カットもできるようになったわけです。身につけたスキルは当分の間は不滅で、しかも一つのスキルからまた別のスキルが発生することもあります。なんにもできない人でも、やっているうちにいろんなことができるようになるのがDIYの魅力です。だからDIYって楽しいし、だから自分でやることに意味があるんですよね。ロッキングチェア作り以外にも、中原奈子さんは少ない技術と豊かな発想で次々と面白いモノを一人で作り上げていくんですけど、そこに「スクール×ツクール」の魅力が詰まっています。

つくることはこわすこと。DIYは儚いけど・・・

田岡りき・wogura『スクール×ツクール 2』(株式会社小学館、2020) p.150より引用

さて、雑魚いスキルでマイペースなDIYに励む中原奈子さんと対照的に、立川きずくさんは道具も技術力も発想力もレベチです。2巻ではこのように(パクった鍵で侵入した)学校の屋上に(無断で)壮大な秘密基地をおっ建てます。これは流石にすごいですね。

とはいえこんな立派なものを建ててしまったら、すぐに教師共にバレてしまうに違いありません。立川きずくさんだってそんなことはわかっています。立川きずくさんはメチャクチャにアウトローな人間ですが、そうは言っても流石に教師や校則には勝てないので、もちろんそのへんはよく考えた上で行動をしています。

この秘密基地は夏休み限定のもので、夏が終わるのと同時に撤去してしまう予定なのです。

田岡りき・wogura『スクール×ツクール 2』(株式会社小学館、2020) p.148より引用

机だのハンモックだのと突拍子なくDIYをやっているように見える立川きずくさんですが、実は理想の秘密基地を完成させることをライフワークとして活動しています。立川きずくさんは幼少期からそこら中の空き地にいろんな秘密基地を作ってきました。ところが、基地が立派になるにつれて、そして立川きずくさんが大人になっていくにつれて、他人の土地に勝手に秘密基地を建てることは、どんどん許されなくなっていきます。この世でただひとつ自作をする余地が全く無いのが「土地」なのです。DIYオタクなら、「部屋が狭くなるじゃん」と、せっかく作った作品を家族に邪魔扱いされたことが1回くらいあるでしょう。

秘密基地を作ってもギリ部活動の範囲として見逃してもらえるかもしれない夏休みの学校の屋上は、まだギリ子供と言っても良い年齢の立川きずくさんにとって、秘密基地を作れる最後の場所なのです。だから立川きずくさんは、夏休み限定で学校の屋上に秘密基地を建てます。

立川きずくさんはなんにも考えずに行動しているように見えますけど、実際は、終わりつつある自由な時間を満喫することに全力を注いでいる女です。儚いですね。

田岡りき・wogura『スクール×ツクール 2』(株式会社小学館、2020) p.152より引用

考えてみればDIYとは儚い趣味です。モノづくりには必ず、他のことにも使えたはずの材料を切断をするなどして別のモノに作り変える過程がともないます。学校の椅子で机を作ったのが良い例ですけど、モノづくりと言いつつも、その過程で材料はどんどん破壊されていくわけです。せっかく作り上げた作品だって、いつかは捨てないといけません。家のスペースには限界があるし、そうでなくてもモノはいつか壊れるからです。おれは実家に置いといた自作スピーカーをいつのまにか家族に捨てられていた経験を持つので、気持ちがとてもよくわかります。モノをつくることには、我々が歳をとっていくのと全く同じ不可逆性があります。

DIYは儚い趣味です。つくったモノはたちまちに壊れるし、使える土地だってどんどん無くなっていって、子供で居られる時間は今にも終わりそうです。でも、おれたちにはDIYをするという手段があります。何一つ思い通りにならない世界でも、「DIYで一度作ったことがある」という事実だけは変わることがありません。一度片付けてしまっても、また作れば良いのです。1回作れたのだから次も作れるはずです。「スクール×ツクール」を読むとそんな気がしてくるのです。

DIY部の活躍が読めるのは「スクール×ツクール」だけ!今のところ3巻まで発売中です。はよ4巻を発売してほしいです。

追記:4巻も発売されましたよ~。新キャラ登場です。メチャおもしろいので直ちに読みましょう


終わり。

せろりんでした。

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