アナログ一眼レフを買ったぞ!

写真、カメラ

せろりんです。

フィルム一眼レフを買いました。

ニコンのNikomat FTNです。

この記事は、国産フィルム一眼レフは安くて楽しくて素晴らしいぞという話を主にカメラに詳しくない人向けに力説する内容です。

お散歩してたらカメラ買ってたぞ!

空が青く晴れ渡るように – キネオーブがこんなに

つい先日、街の写真を撮ろうと聖蹟桜ヶ丘にお散歩しに行っていました。そのへんの駅ビルに入ると昔ながらのカメラ屋さんがあって、おれはそういうお店を見ると掘り出し物があるような気がしてつい覗いてしまうわけです。

ショーケースの中の中古カメラを興味深く見ていると店の奥から初老のおじさんがやってきて、カメラ好きなのかい、と言いながら、そうして店の奥から持ってきた在庫のカメラを、ショーケースの上に次々乗せてくるではありませんか。

今日はお散歩しに来ただけなんだから絶対何も買わないぞと思いながら、せっかく用意してくれたのだからと一通り眺めてみると、その中に国産のフィルム一眼レフが、レンズ付き2800円というそこそこ安い値段で鎮座しているわけです。そしてそのときおれは思い出したのです。そういえば、ちょうど国産フィルム一眼レフを切らせていたところだった!

Nikomat FTNを買ったぞ!

そういうわけでNikomat(ニコマート) FTNを買いました。1967年に発売されたニコン製フィルム一眼レフの普及機です。普通にカッコいいですね。

めちゃくちゃ高性能なわけではなく、めちゃくちゃかっこいいわけでもなく、普通の性能で普通のカッコよさです。

ニコンらしく質実剛健感があるなーとか、巻き上げの感触がメッチャいいなーとか思うところはありますけど、とりわけ素晴らしい個性があるわけでもありません。

この手の古いマニュアルフォーカス一眼レフの普及機は、あんまり人気が無い一方で弾数が非常に多いので異常な低価格で売られがちです。この機種もレンズがカビまくっている上に一部故障しているとはいえ、2800円です。ちゃんとしたお店で動作確認をした上で売られていることと、そこそこいいスペックであることとを考えればかなりの安さです。

まずは撮るぞ!

そういうわけでこのカメラで撮った作例です。

まあまあ悪くない写りをしているんじゃないでしょうか。フィルムカメラの画質はレンズだけで決まるので、NikomatFTNの写りというよりは付属のNikkor-H 50mm F2.0の写りと言っても良いです。

これはたしか最も背景がボケる設定で撮った写真です(詳しい人向け:絞り開放です)。背景がボケる設定で撮るとピントが合った部分の画質も落ちるのがカメラの基本なので、まあこの写真の写りはそれなりです。

実はこのレンズは引くほどカビていて、カビレンズは逆光に弱いという性質があるんですが、その割にこの個体は言うほど描写が破綻してない印象です。

いま助けてやるからな・・・。

昔の日本製50mm単焦点レンズって感じの写りです。シックで上品な写りですね。

レトロな写りですね~。まあでも、このカメラがレトロな写りをするのだというよりは、レトロな時代の写真の大体がこういうカメラで撮られているだけな気もします。写真の写り方には流行り廃りがあって、いまの我々が写実的だと思って見ているiPhoneの写真も、30年くらいすれば令和初期特有の写りとしてレトロさを尊ぶカルチャーに組み込まれるのかもしれないです。

けっこうボロいぞ!

さて、このカメラにはいろいろな不具合があります。特に致命的な点は、レンズのカビがヤバいことです。高温多湿の日本では、古いカメラレンズはたちまちカビてしまいます。小さなカビであれば撮れる写真には影響ありませんけど、これだけカビていると流石に何らかの影響は出ているでしょう。

ただまあ、フィルムカメラは写りが悪いのを楽しむのが醍醐味みたいなところもあるので、個人的にこれはセーフです。自分で分解してカビをとってもいいですし、何より一眼レフはレンズを交換できるのが良いところなので、気に食わなければレンズだけ買い替えれば良いのです。

モルトも死んでいます。装填したフィルムを光から守るために、カメラ(特に国産カメラ)の裏蓋にはモルトと呼ばれる黒いスポンジが多用されるわけですが、高温多湿の日本ではモルトはたちまち劣化してボロボロになります。

モルトが劣化すると外部の光でフィルムが感光してしまうおそれがあるので非常にまずいです。とはいえモルトの張替えは素人工作で簡単にできますし、実はモルトなんて無くても意外と普通に写ることも多いので気にせず購入しました。今回は賭けに勝って見事に問題なく写っています。

それと露出計も死んでいるらしいです。大体のフィルムカメラには露出計と呼ばれる光量センサーが入っています。そしてこの時代のカメラは、露出計の情報を確認しながらカメラのダイヤルをいじって自分で設定を変え、フィルムに当てる光の総量をちょうどいい加減に調節する必要があります。もう少しだけ先の時代になるとカメラが勝手に光量を調節してくれるようになるものの、この時代は人間が操作をする必要があります。

ただしカラーネガフィルムは光量がいい加減でもそれなりにちゃんと写るので、露出計なんて使わなくても良いというのがおれのスタンスです。たとえば写ルンですは露出計もなければ変えるべき設定も存在しないわけですが、明るい場所ならそれなりにちゃんと写るんです。

ファインダーがメチャ見やすいぞ!

カメラにもいろんな方式があります。二眼レフとか、レンジファインダーとか、いろいろある方式の中でも、一眼レフと呼ばれる方式は飛び抜けて良くできた技術方式です。われわれパンピーがカメラを使えるようになって大体100年も経っている中で、一眼レフと呼ばれる方式は、大体60年もの間カメラの王だったのです。

一眼レフは、撮影用のレンズから入ってきた像を内部のミラーで反射させることで、撮影できる予定の画像をファインダーからそのまま覗くことができる方式です。普段は内部に備えた鏡でファインダーに像を送りつつ、シャッターを押した瞬間はミラーを退かしてフィルムに像を送る、というメカニズムを採用することで、一つたったのレンズでファインダー像と撮影用の像を作っています。

これに比べて、二眼レフと呼ばれる方式はファインダー用のレンズと撮影用のレンズをわざわざ2個備えているため、レンズを作るコストが倍かかる上にカメラ本体がデカくて重いという欠点があります。二眼レフは、主にその欠点のせいで1950年代後半にはオワコンになってしまった方式です。

一方で一眼レフは、カメラの主流がデジタルになっても生き残り続けた方式です。しかも、単に生き残り続けただけではなく、幅広いジャンルのプロカメラマンに使われ続けていたのが一眼レフのすごいところです。

ここ2,3年はミラーレスデジタル一眼の登場により、ようやく一眼レフがオワコン化してきた印象があります。しかしカメラの歴史を見れば、その時代のプロが使っていたカメラのほとんどは一眼レフです。一眼レフというのはそのくらい素晴らしい技術なのです。

一眼レフの素晴らしい点はなんといってもファインダーの美しさと正確さです。撮影に使う像をそのまま確認することができるため、ピント位置や背景のボケ具合を完璧に視認することができます。

今でこそカメラのオートフォーカス機能が勝手にいい感じにピントを合わせてくれますが、昔のカメラは自分でピントの調節をしないといけなかったので、この特長は非常にありがたいわけです。

このカッコいいシルバーのカメラはおれが持っているソ連製のカメラKIEV 4mです。このカメラは、レンジファインダー式と呼ばれる、一眼レフの前の時代に流行っていた方式を採用しています。レンジファインダーカメラのファインダーは、ただのガラス板がハマっているのにほとんど近い状態で、ボケ具合やズームの具合を詳細に確認することはできません。やや語弊のある言い方ですが写ルンですと同じと思っていただいても良いくらいです。サメも心なしかぐったりしていますね。

もちろんレンジファインダーはレンジファインダーで楽しいですし、例えばライカなんかはレンジファインダー式でありながら今でもファンが多いです。そういうわけで一概にどの方式が上とは言えませんが、きれいな写真を量産するという点で言えば、やっぱり一眼レフが一番優れていると思います。

ちなみにライカのレンジファインダー式カメラは当時ガチでメチャクチャ完成度が高かったそうです。それゆえライカに勝てないと悟った日本のカメラメーカーが当時主流だったレンジファインダーを見限って一眼レフ方式に注力した結果、ライカはレンジファインダー式カメラと共にオワコン化してしまったのだという逸話があります。カメラ好きの間ではメチャクチャ有名な話です。

そして今回買ったNikomatFTNは、一眼レフが大ヒットして日本メーカーがイケイケになってきた頃の普及機なのです。

買え!

そういうわけで国産フィルム一眼レフは良いぞって話でした。

NikomatFTNは正直言って当時の他の国産フィルム一眼レフと比較して特に性能が高いわけでも質感が高いわけでもわかりやすくカッコいいわけでもなく、おれは気に入っているものの個性が強いとは言い難いカメラです。しかしとはいえ、国産フィルム一眼レフというジャンル自体がメッチャ良いので結果的にNikomatFTNも良いという構図になっています。フィルムカメラというジャンルが成熟しつつある時代でありながら、電気とかいう謎のテクノロジーにはそこまで頼っていなかった頃の古き良きカメラです。

ちなみにせろりんは、昔CanonFTbを使っていた時期もありました。こちらも個性が強いとは言い難い中堅国産フィルム一眼レフですけど、でもブラックの独特のカッコよさがおれは大好きでした。大好きだったんですがこの頃はフィルムカメラを買いすぎていたので数年前の引っ越しを機に売っぱらってしまいました。そうしてちょうど国産フィルム一眼レフを切らしていたときに見つけたのが今回のカメラなのです。

そういうわけで、国産フィルム一眼レフは頑丈で高性能でちゃんと写る一方で弾数が多くハードオフとかで安く買えて良いですよという話でした。フィルムカメラデビューをしたいけど特に機種にこだわりが無い人は国産フィルム一眼レフを買うといいんじゃないでしょうか。実家に眠ってるパターンもありますので押し入れを掘り起こしてみるといいんじゃないでしょうか。

終わり。せろりんでした。

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