最近聴いたオーディオブック 2023年7月の部――意識は傍観者、宇宙人と出会う前に読む本、俺か俺以外か、死物語上

おはせろ!

せろりんです。

新コロになって体調が死んでいます。

そういうわけで新参Audibleヘビーユーザーのせろりんが最近聴いたオーディオブックを紹介するシリーズです。

若干のネタバレを交えながら感想を書きますが、知った瞬間に話がつまらなくなるような致命的なネタバレは避けます。

あなたの知らない脳 意識は傍観者である

Audibleに追加されたとき、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!って思ったタイトルですね~。前に字で読んだことがあって、メチャクチャおもしろくていろいろと影響も受けた本です。メチャ面白いけど内容を忘れてきたからそろそろ字でもう1回読もうかな~、でも分厚いからしんどいな~と思っていたところAudibleに追加されてキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!って思いました。

脳はほとんどのことを無意識にやっていて、我々が意識と思っているものはほぼ何もしていない、と主張をしている本です。それどころか著者は、いくつかの実験結果を援用した上で、意識はただ無意識が実行した行為にあとから理由をこじつけて理性的に判断したつもりでいるだけなのかもしれない(受動意識仮説)とすら言っています。そういう感じの本です。最後のほうでは、人間の行動のほとんど全てか、もしかすると全部は無意識(=脳)に支配されているとした上で、刑罰を「非難に値する」かどうかで決める現状の法制度のかわりに「修正可能である」かどうかで刑罰を決める法制度に移行するべきだという、やや壮大な話になります。毎秒興味深いめちゃくちゃいい本です。

おれがマジか~と思ったのは、車線変更の話です。我々がいかに多くのことを無意識にやっているかを暴くために著者は、車線変更をするときハンドルをどう動かすかを脳内でイメージしなさい、と読者に問いかけます(免許のない人はゴーカートか、自転車でもいいです)。すると、おれを含むほとんどの人間は、ハンドルを右にいくらか傾けて、右の車線に移った後にハンドルを元の12時の方向に戻す動きを想像します。ところが想像した動きを実際に行うと、ハンドルを12時に戻した後も車は右に向かって走り続けて、ついには中央分離帯に激突してしまいます。

言われてみれば、ハンドルを右に傾けて、12時の方向に戻した後には、ハンドルを左に傾けて車線に対して車を平行に戻さないと車線変更は完了しません。何度も繰り返したはずの動作なのに、実はおれたちは細かいところをなにも意識していないわけです。教習所では「漫然運転をするな」なんて言われますけど、人間は漫然にしか運転していないのです。

かといって漫然ではなく全ての動作を意識して運転すれば上手な運転ができるのかというとそんなことはなく、むしろ基本的な動作は無意識に任せてしまったほうがうまくいくに決まっています。著者は、初心者がテニスの上手い人に勝つ方法として、相手に「どうすればそんなにうまくプレイできるんですか」としつこく問いかけながら試合する、という悪辣な方法を提唱しています。自分の体の動きの詳細な部分を意識しようとするほど、無意識にやっていた行動はどんどん下手になるのです。

そんな感じで、興味深い話が詰まりまくった超・エキサイティングな本です。それはそうと、こういう情報の詰まった本を書ける人ってなんで哲学とか神話とか芸術とか、専門と関係ないところにもメチャクチャ詳しいんだろ?って思います。

朗読は秦 なおきさんです。聴きやすくていい朗読でした。

宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう

ブルーバックスにすでに何冊かある「ランニングする前に読む本」「山に登る前に読む本」系の本の存在を前提とした出オチ感のあるタイトルの本です。

要するに宇宙でも通じる普遍的な真理(自然科学と数学)を紹介している本です。副題に教養を身に着けようとあるわりには理系知に偏りすぎだろと思わなくはないですが、宇宙人と音楽や宗教や漢詩やアニメについての会話ができるとも思えないので(地球人のおれにもできないですし)、理系に偏るのは残念だけど当然ですね。

さて、ブルーバックスにしては珍しく、この本は半分くらい小説形式で描かれます。設定としては、ブルーバックスを1万冊購入していたおかげで地球人代表として選ばれた「あなた」が、知的生命が集まる謎のステーションで宇宙人と交流する話です。すると、宇宙人と人間とでは話が噛み合わないことが頻発するので、そのつど著者か作中の宇宙人が解説を入れてくれる、という謎の構成になっています。

わりと面白かったですね~。おれはさすがに理系だしSFもブルーバックスも多少は読むので知っていることも多かったですけど、とはいえ天文学から生物学から数学まで幅広いジャンルを取り扱っていて興味深かったです。

たとえば地球は太陽が1個で月が1個の惑星なわけですが、この状態は実は宇宙的に見るとかなりレアであるとした上で、宇宙人のカレンダーはおそらく地球のものよりずっと複雑であることを指摘しています。太陽以外の恒星系は恒星が1個とは限らなかったり(恒星が3個ある世界を描いた”三体”、なんてSF小説があるくらいです)、月だって同じ太陽系ですら木星には100近い衛星があるわけです。太陽が1個とは限らないことも、衛星がふつうはもっとたくさんあることも、知識としてはちゃんと知っていたのに自分のおかれた環境が宇宙的には特殊だというのは意外です。「教養が大切な理由」みたいな感じの鬱陶しい説教のパターンとして、他者に先入観を向けないためにいろいろなことを知っておく必要があってそのために深い教養が必要である、というのがありますけど、今回ばかりは合ってるのかもしれないです。

ところで「宇宙人に通信だけで左右を伝えることはできるのか」を問うオズマ問題という有名な問いかけがあります。実はこの問題は簡単なように見えて、かなりの難問です(詳しくはウィキペディアとかに譲ります)。有名になるだけあってメッチャ興味深いので、こういう本だったら絶対取り扱うよな?と思って、おれは「オズマ問題くるぞ…くるぞ…※鳥肌注意※」と思いながら聴いていました。ところが結局こなくて「こないんかい!」ってなったのも良かったです。

俺か、俺以外か。ローランドという生き方(ROLAND)

「モナリザの気持ちが分かるのはRolandだけ」みたいな感じの謎のかっこうつけた発言がウケている元歌舞伎町ナンバーワンホスト「ローランド」の自伝です。有名な人が書いた有名な本です。

前々から紙で読もうかな~と思っていたんですが、実はAudible化されていたことを知って、しかも朗読をローランド本人がやっているらしいので満を持して聴いてみました。

ローランドが幼少期から現在に至るまでの半生を順番に振り返るようなよくある内容かな、と思いきや全然違ってビビりました。ローランドの名言とされている言葉を片っ端からローランド本人が解説するというガチで謎の構成です。この内容をローランド本人が朗読しているのもツボです。一歩間違えばスベりまくってしまう際どい内容でありながら、ローランドの堂々の朗読のおかげかガチで面白く仕上がっています。

もちろん、ローランドがかっこつけた振る舞い――ローランドにいわせればカッコのほうがつけさせてくれと頼んでくるらしいですが――をするのは、ローランドがそういうキャラ作りをしているからに他なりません。言うまでもなく、ローランドのキャラクター通りの人間が実在するわけではないのです。とはいえ、われわれが焼き物に勝手に宇宙や大自然を見出すのと同じように、われわれはこの本をどう読み取っても良いわけです。ローランドの言うことを真に受けて自己啓発に使ってもいいですし、自分を勇気づけてくれる精神安定剤として読んでもいいですし、世間の流行を知るために読んでもいいわけです。どのような楽しみ方もできるのがこの本の魅力だといえます。おれはどちらかといえばギャグエッセイと捉えて爆笑しながら聴いていました。

さて、ローランドといえば八王子出身のタレントです。なんといっても「七王子を八王子に変えたのは俺さ」と自称しているのがローランドです。だからなのか、八王子駅の近くにはローランドの胸像があって、その後ろにはローランド監修のイタリアンレストランがあります。

そして、今日まで秘密にしてきたことですが―――おれはローランドに仕えていた時期があります。実はローランド監修のイタリアンレストランは、少し前までローランド監修のタピオカ屋でした。そしておれは何年か前にウーバーイーツの配達員をやっていた時期があって、ローランドのタピオカ屋のタピオカミルクティーを配達したことが、つまりローランドに仕えていたことがあったのです!

なんて光栄な話なんでしょう。まあ、おれがローランドに仕えていたのではなく、ローランドのほうがおれにタピオカの配達をしてくれと頼んできたのかもしれませんけど・・・。

死物語 上(西尾維新)

物語シリーズの(Audible上の)最新作ですね~。5月末にAudibleの聴き放題に追加されたばかりです。物語シリーズは2006年に発売された第一作「化物語」からなんやかんや続篇が出まくっている大作で、「死物語 上」は活字の本としては2021年の8月に発売されたばかりの作品です。

ガチでおもしろかったです。2021年8月といえばコロナ禍真っ只中なわけですが、なんとこの小説にもコロナ禍が反映されています。シリーズの最初では主人公はもともと高校生だったわけですが、「死物語 上」は主人公の大学生活を描きます。高校生編から社会人編までを描くシリーズの中で大学生編があまり描かれていなかったのを良いことに、主人公の大学生活は実はコロナ禍の時代だったのでした…、と作中の歴史を捻じ曲げる力技でコロナ禍を描いているのがこの作品です。たしかに、長いシリーズなので、細かいところで現実世界からのフィードバックが入ることは前々からありました。たとえば初期はガラケーを使っていた人がいつのまにかスマホになってるとか、初期は妹と殴り合いの喧嘩をしていたけど倫理観がアップデートされて大人しくなるとかですね。しかしそれにしてもコロナ禍をぶち込むのは歴史修正が豪快すぎて凄味がありました。

あらすじを超ダイジェストで説明すると…、コロナと同時に、吸血鬼ばかりが死ぬ謎の病気が欧州で流行っていることを知った主人公(いろいろあって半分吸血鬼みたいな体質になっていて、吸血鬼の奴隷も従えている)が事態を収拾するために欧州に向かって事態を収拾しようとする話です。

や、面白かったな・・・。ちなみに死物語から入るのは流石にあんまりおすすめしないです。一応、物語シリーズは、どうせ途中から読む人なんてほとんど居ないのに親切なことに毎作必ず初見の人のために最低限の設定や登場人物を作中で解説してくれる仕様になっています。コナン映画と同じですね。そういうわけで、大抵の作品は途中から読み始めても理解できるようになっていますけど、死物語は流石に登場人物や必要な前提知識が多くてついていけないでしょう。第一作「化物語」からがんばって30本くらい聴いて最後に死物語を読むのがおすすめです。

朗読は白石涼子さんです。主人公の奴隷の吸血鬼のかわいらしさが際立ついい朗読でした。


終わりだよ~。

新コロになって体調が死んでいます。

このシリーズはめがねこ先生の最近聴いている曲シリーズの雑パロです。

せろりんでした。

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