「安達としまむら」アニメにハマったら原作小説を読もう!

せろりんです。アニメ「安達としまむら」を見て面白かったので原作小説に手を出したんですが、なかなかものすごい内容です。

アニメにハマった皆様には原作小説を読んで頂きたいので、アニメを全部見た人向けに原作小説を布教する記事を書きます。

原作小説の内容を若干ネタバレをしながらオススメポイントを紹介していくスタイルの記事なんですが、面白さを著しく損ねるようなデカいネタバレは避けているつもりです。とはいえ、原作小説を読むことを既に決意していて、なおかつネタバレを気にする人は読まないほうがいいかもしれません。

章によって視点が違う!人間が何を考えてるかわからなくなるぞ

「安達としまむら」は章によって視点が変わるという特殊な形式になっています。主に安達視点の章と、しまむら視点の章があります。

アニメも一応その形式を踏襲していて、たとえばしまむらが独白しているときは安達の独白が入らない作りになっています。ただし、アニメは構成を多少イジっているので、視点が章によって変わる原作独自の仕組みが完全に再現できているとは言いがたいです。そもそもアニメはモノローグをかなり大胆にカットしているので、原作とはちょっと雰囲気が違います。アニメもかなりモノローグもりもりでしたけど、あれでもかなりカットしたほうで、原作はもっと盛りだくさんです。ただし、小説というメディアなので違和感は全くありません。

小説だと、そこそこ長い1章の全部が完全にどっちかだけの視点で描かれます。なので、たとえば安達視点の章を読んでいる間はずっと、しまむらの気持ちが一切わかりません。相手の考えていることがわからないので、見ていてまあまあ不安になります。

でもそれって現実のコミュニケーションも一緒ですよね。おれは常におれ視点で生きていて、そこには自分の心の声はあっても、神視点の地の文も無ければ、相手の心理描写もありません。相手の気持ちは推測するしかありません。「安達としまむら」原作小説は、章によって視点を変えることで、コミュニケーションの生々しさを表現しています。そこが原作小説の魅力です。

ちなみに、日野目線、永藤目線、しまむら妹目線の章も時々あります。ところが樽見視点の章は最新刊の時点では存在しません。樽見が何を考えているのかわからないのでメチャクチャ怖いです。

「安達としまむら しまむら編」が始まるよ~

アニメで放送された、原作1から4巻までの内容は、わりと「安達としまむら 安達編」みたいな内容だったと思います。ストーリーを通して救済されているのはどちらかといえば安達のほうで、しまむらは基本的にそれに振り回されているだけ、という印象です。ところが、原作の6巻以降は「安達としまむら しまむら編」みたいな内容が入ってきます。

アニメでは若干ミステリアスな人間として描かれていたしまむらなんですが、6巻以降ではしまむらの過去や現在や未来に注目した話が続きます。9巻で描かれるのは、中学時代のバスケ部の後輩と街で偶然に出会ってしまうしまむらです。中学生のしまむらはバスケに熱血していて、しかも若干イキっていたようです。

「先輩はなんか丸くなりましたね」

後輩が自転車のハンドルを握ったまま指摘してくる。

「そうかな?」

「昔の先輩は舐めた口きく後輩なんてまず蹴りいれてましたからね」

「それは嘘だ」

 そこまで暴力に訴える度胸はない。そう、人を叩くには強い意志が必要だ。

 へにょへにょなわたしには到底無理である。

「でも、気に入らない後輩にはろくにパスしませんでしたよね」

「それは、やったかも・・・・・・」

入間人間(2020),安達としまむら9(電撃文庫) (Kindle の位置No.30-35). 株式会社KADOKAWA, Kindle 版

しまむらって気に入らない後輩にパスしないような怖いセンパイだったらしいです。へ~、興味深いですね。たしかにアニメでも「昔の私はなんであんなにエネルギッシュだったんだろう」みたいな回想を度々していました。中学生のしまむらは、何かを求めてギラギラしていたみたいです。アニメのボーっとしてるしまむらしか知らないとメッチャ意外に感じます。

我々が良く知っている高校生のしまむらは、まるでライトノベルの登場人物であるかのような見事な無気力ヤレヤレ系主人公として人生を生きています。しまむらは人やモノにあまり執着がありません。仏教で言うところの無常を悟っているわけです。無気力なのが悪いと言うつもりは一切ないんですが、それはそうと、なんでしまむらは無気力な人間になったんでしょうか。

アニメを見て推測できる答えとして、樽見の存在があります。いろいろあったんでしょう。

原作を読めばわかるもうひとつの答えとして、6巻で出てくる、祖父母が飼っているの犬の存在があります。しまむらは祖父母の家の犬と一緒に成長してきました。ところが、しまむらが思春期を迎えると同時に、犬は老いてどんどん元気がなくなっていきます。原作6巻では、しまむらと老犬の心のふれあいを描く、安達としまむら帰郷編が描かれます。しまむらファン必見です。

ちなみにおれはしまむらみたいな性格をしているので、しまむらの心理描写がガチすぎて1ページごとに大ダメージを食らいながら読んでいました。冷静に考えるとおれたちってなんで今の性格になったんでしょうか。ほとんどの大人は、幼少期や思春期の頃とは、多少は性格が変わっているはずです。なんで今みたいな性格になったんでしょうか。おれは「安達としまむら」を読んでから毎日のようにそんなことを考えています。なんでなんでしょうね。

中学生の安達が描かれてるぞ!

安達といえばしまむらのことしか考えていないことで有名です。じゃあ、しまむらと出会う前の安達はどんなヤツだったんでしょう?

「安達としまむら」4巻には、安達の中学の同級生視点から、しまむらと出会う前の安達のことを描いた章があります。おれはかなり好きな章なんですが、アニメだとバッサリとカットされてしまいました。

桜さんとは一年生の時も同じクラスだったけど、話したことがない。でもどういう人かは遠くから見ていてもわかっていた。愛想の欠片もなくて、冷淡で、口数が少なくて。

 そして、その横顔は透き通るように綺麗だ。

 だから、氷の彫像とでも評されるのだと思う。今、私もそれを実感してしまった。

入間人間(2015). 安達としまむら4 (電撃文庫) (Kindle の位置No.24-28). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

安達は中学時代、「氷の彫像」という、ちょっと恥ずかしめなアダ名が付いていたらしいです。ウケますね。

安達のことを「桜さん」とか呼ぶお前は誰やねんという話なんですが、この人は安達の同級生の名もなき少女です。この章は、中学生の安達と名もなき少女が図書委員の当番に抜擢されてしまうところから始まります。

しまむらという太陽に出会ってデロデロに溶ける前の、まだ氷の彫像だったときの話です。安達という人間を理解するためのかなり重要なエピソードです。せろりんイチオシのお話なので是非読んでいただきたいです。

HINOと永藤/ヤチーとしょーさんもあるぞ!

原作だと、日野と永藤や、ヤシロ(宇宙人)としまむら妹の話もたくさん収録されています。

日野と永藤は保育園の頃からの友人なので、アニメの1話の時点で既に「こいつら結婚してんのかな」と思うくらいには仲が深いです。原作では、日野と永藤が出会った頃の話がたくさん収録されています。

日野家は地元の名士の家で、日野はああ見えて実はお嬢様だという設定があります。日野ってああいうフリーダムな性格なので、厳格な日野家にイマイチ馴染めないようです。だから、しがない精肉店の永藤家に入り浸ってるわけですね。

日野は日野で、闇が深いというほどではありませんが、おうち関係でかなり苦労して生きているっぽいです。原作だと、そのへんのドラマも展開されています。

ヤシロとしまむら妹のほうは、宇宙人と小学生という組み合わせなので、かなり雰囲気が謎です。「お?」「は?」「え?」と混乱しながらも二人が確実に仲良くなっていくのは迫力がものすごいです。

日野と永藤、ヤチーとしょーさんの話はアニメだとかなりバッサリとカットされているので、安達としまむら以外のキャラクターが好きな人は原作を読むと楽しめると思います

絵がステキだぞ!

入間人間(2016) 安達としまむら7 (電撃文庫) (Kindle の位置No.1). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

原作はイラストがガチでかわいいです。アニメのキラキラした美麗な絵とは若干雰囲気が違って、ふわふわした儚い印象の絵です。特にしまむらは原作だとボケーっとした表情で描かれていることが多いです。

入間人間(2019), 安達としまむら8 (電撃文庫) (Kindle の位置No.1). 株式会社KADOKAWA.Kindle 版.

このしまむらの、一見優しい表情をしていながら、実のところは何考えてるかよくわからない顔、良くないですか?

©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 「安達としまむら」8話より

「でもそういうしまちゃんのうっすい感じの横顔を見ているとさ、なに考えてんだろー、って思っちゃうわけ。そうなったら負け、いや勝ちなところあるんだ」

©2019 入間人間/KADOKAWA/安達としまむら製作委員会 「安達としまむら」8話より

樽見がこんなこと言ってましたけど、原作の絵を見ているとなんだか気持ちがわかるような気がします。コイツ実際のところ何考えてるんだろうな、と思って見ているとなんだか引き込まれていってしまうような絵です。原作絵は、ゲロかわいいだけではなく、ストーリーを正確に表現している点もたいへんステキです。

そんなステキな原作絵が見られるのは原作だけ!ただし、非常に残念なことに9巻からはイラストレーターが降板してしまったらしく、代わりにアニメの絵が表紙絵として採用されています。ウーム残念ですね。


安達としまむらの原作小説は9巻まで出ています。アニメだとちょうど4巻の最後までアニメ化されています。続きが気になる方は是非読んでみてはどうでしょうか。

おれの感覚だと、大体の原作ファンは「安達としまむらは5巻以降から突然面白くなる」「6,7,8巻が最高」みたいなことを言っています。おれも7,8巻あたりが無限に好きです。ただし5巻はちょっとなあ、と思っています(読んだ方なら、共感してくれるかどうかは別として理由はわかってもらえると思います)

アニメ化された1から4巻も面白いんですが、それ以降は面白さが更に加速していくので、気になった人は是非読んでほしいです。

おれは数日で一気に読んだんですが、しばらく安達としまむら以外のことをなんも考えられない謎の人間になってしまいました。読んでると具合が悪くなる小説です。「安達としまむら」のアニメが好きな方であれば楽しめると思うので是非読んでみてください。

終わり。

せろりんでした。

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安達としまむらのアニメの感想です。対戦よろしくおねがいします。

コメント

  1. […] […]